雨の日の配達や通勤で「バイクに屋根があればかなり楽なのに」と思ったことがある人は多いはずです。レインウェアを着ても顔や手、足元は濡れますし、冬は前から受ける風だけでも体力を奪われます。
結論からいうと、毎日の通勤やフードデリバリーで使うなら、後付け屋根はかなり魅力的です。ただし、横風の影響、重量増、価格、駐輪場所、スクリーンの傷や曇りなどデメリットもあります。
そしてNMAX・PCXクラスで考えるなら、個人的には公道で日常的に使う屋根をゼロから自作するより、車種専用または取付実績のある市販ルーフを選ぶ方が現実的だと考えます。
この記事の検証範囲
エラビベース編集部はNMAX125を実際のフードデリバリーで使用していますが、後付けルーフはまだ装着していません。そのため屋根の走行感について実使用したような断定はせず、2026年8月時点のメーカー・販売店公式情報、公開されている仕様をもとに比較します。

先に結論:NMAXならTEITO、PCXなら専門店仕様が有力
| 選択肢 | 向いている人 | 価格の目安 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| TEITO SLR for NMAX | NMAX25〜26年型で本格的に使いたい | 280,500円 | ★★★★★ |
| PCXルーフ仕様(専門店+帝都産業ルーフ) | PCXを屋根付きで新規購入したい | 要問い合わせ | ★★★★★ |
| ZORROルーフカウル | 対応する旧型PCX・トリシティ等を長く使う | 車種・仕様による | ★★★★☆ |
| コロポックル等の汎用・軽量タイプ | 費用を抑え、脱着性を重視 | 約79,000円〜 | ★★★☆☆ |
| 通販の格安汎用キャノピー | 低予算で試したい | 1万円台〜 | ★★☆☆☆ |
| 完全自作 | 工作・設計・安全確認まで自分でできる | 材料次第 | ★☆☆☆☆ |
特にNMAXは状況が変わりました。現在は2025〜2026年モデルのNMAX125/155に適合するTEITO製専用ルーフキットが、ヤマハ発動機グループのワイズギアで扱われています。後付け屋根を本気で考えるなら、まずここを基準にするのが分かりやすいです。
後付け屋根のメリット
1:雨が体に直接当たりにくくなる
最大のメリットです。屋根と大型スクリーンがあることで、上半身や顔に直接当たる雨をかなり減らせます。
ただし、屋根があっても完全防水ではありません。横から吹き込む雨や足元への水しぶきは残るため、強い雨の日はレインパンツや防水シューズを併用する方が現実的です。
2:冬の風圧を減らせる
実は雨以上に大きいのが前面スクリーンです。走行中に胸や顔へ直接当たる冷たい風を減らせるため、冬の長時間配達では疲労感の軽減が期待できます。
3:夏の日差しを遮れる
天井が常に日陰を作るので、真夏の直射日光対策にもなります。TEITOのNMAX用SLRはUVカットスクリーンを採用し、UV-A 95.8%、UV-B 99.9%カットと案内されています。
4:ワイパー付きなら雨天時の視界を確保しやすい
本格的なルーフキットは電動ワイパーを装備しています。ヘルメットシールドだけに雨粒が付く状態より、前面スクリーンをワイパーで拭けることは大きなメリットです。
5:配達で稼働できる天候の幅が広がる
フードデリバリーでは、雨の日こそ注文やクエストが増えることがあります。屋根があることで心理的・身体的なハードルが下がり、雨天稼働を選びやすくなるのは大きな利点です。
後付け屋根のデメリット
1:横風の影響が大きくなる
最も注意したい点です。屋根とスクリーンを付けると横から風を受ける面積が増えます。専門メーカーも横風の影響が増えることを認めており、TEITOはSLRについて強風・荒天時の使用を避けるよう案内しています。
雨だから屋根を付けるのに、台風や強風でも走れるようになるわけではありません。むしろ風が強い日は屋根なし以上に慎重な判断が必要です。
2:重量が増えて重心も高くなる
TEITOの現行NMAX用SLRはキット単体9.9kg、車体側で不要になる部品との差し引きでは約8.9kg増とされています。NMAX本体が約132kgなので、10kg弱の追加は無視できません。
しかも重さの一部は車体上部に来るため、押し歩き・Uターン・低速時の感覚は変わる可能性があります。
3:価格が高い
NMAX25〜26年型用TEITOルーフは280,500円。さらに取付工賃が必要になる場合があります。
NMAXの新車価格自体と比べてもかなり大きな追加費用です。趣味で月に数回しか乗らない人より、通勤・営業・フードデリバリーなどで年間走行距離が長い人ほど費用を回収しやすい装備です。
4:駐輪場所を選ぶ
現行NMAX用SLR装着時は全高1,830mm、全幅900mmと案内されています。低い屋根の駐輪場、立体駐輪機、狭い通路では使えない可能性があります。
5:スクリーンやワイパーのメンテナンスが増える
大型スクリーンは傷、汚れ、経年劣化の影響を受けます。雨の日に視界を確保するため、ワイパーゴムやスクリーンの状態も定期的に確認する必要があります。

NMAXならTEITO「SLR for NMAX」が第一候補
NMAXで後付け屋根を考えるなら、2026年時点ではTEITOのSLR for NMAXが最も安心して選びやすいと考えます。
- 25〜26年型NMAX125/155専用設計
- ワイズギア取扱品
- 手元スイッチ式電動ワイパー
- 両面ハードコートのポリカーボネートスクリーン
- 2層ABSルーフ
- UVカット
- 補修部品の問い合わせ先が明確
- 専門店での取付を前提にしている
最大の弱点は価格ですが、配達で何年も使う、雨の日にも稼働する、冬の風を減らしたいという人なら候補にしやすいです。
なお、24年モデル以前には別品番のNMAX用SLRが用意されているため、中古NMAXでは年式を確認してから選ぶ必要があります。
PCXは専門店の「PCXルーフ仕様」が現実的

PCXはHonda純正の後付けルーフが用意されているわけではありません。ただし東京都大田区のオートサービス翔では、PCX125/160に帝都産業製ルーフを組み合わせた独自の「PCXルーフ仕様」を販売しています。
重要なのは、同店では基本的に車体+屋根のコンプリート販売としており、すでに他店で購入したPCXへの屋根だけの取付は原則行っていないという点です。
これからPCXを買う人で屋根が欲しいなら有力ですが、すでにPCXを所有している人は、対応してくれる施工店を別途探す必要があります。
ZORROは良いが、現行車対応と納期を確認したい
FRP工房ZORRO(ゾロワークス)はバイク用ルーフでは有名な専門メーカーです。GFRP製ルーフ、電動ワイパー、ハードコートスクリーンなど、本格的な作りが特徴です。
ただし2026年8月時点で公式ラインナップに掲載されているPCXは主にJF56/KF18など旧型で、現行JK05は通常ラインナップとして確認できません。また公式サイトではルーフカウルの納期は12カ月以上と案内されています。
対応車種に乗っていて、納期を待てる人には魅力がありますが、現行NMAXなら専用品があるTEITOの方が選びやすいです。
安く済ませるなら汎用ルーフという選択もある
コロポックルでは、車種専用ではないバイク向けオーダーメイド屋根を販売しています。2026年8月時点でYahoo!ショッピング掲載のノーマルモデルは79,000円で、後部にキャリア等が必要と案内されています。
専用ルーフより大幅に安く、脱着や部品交換をしやすいことがメリットです。一方で、NMAX専用SLRのように車体と一体で設計された製品とは性格が異なります。購入前に車種への適合、固定位置、ハンドル切れ角、ミラー視界、風の影響を販売元に確認した方がよいでしょう。
Amazonなどの1万円台の汎用屋根はどう?
通販では1万円台の汎用キャノピーも見つかります。価格だけなら圧倒的に安く、「まず屋根を試してみたい」という気持ちは分かります。
ただし、日常的に公道を走る配達車としては、固定強度、補修部品、スクリーン品質、ワイパー、車種適合、取付後の寸法が分かりにくい製品は積極的にはおすすめしません。特に毎日100km近く走るような用途なら、購入価格より故障時の部品供給や取付店の存在を重視した方が安心です。
屋根を自作するのはあり?
結論として、駐車中の日よけ程度ならDIYの余地はありますが、公道を毎日走る本格的な屋根をゼロから自作するのはおすすめしません。
自作のメリット
- 材料費を抑えられる
- 自分の身長やリアボックスに合わせられる
- 壊れた部分を自分で直しやすい
- 屋根幅や高さを自由に決められる
自作のデメリット
- 走行風・横風に耐える強度計算が難しい
- 振動でボルトや接合部が緩む可能性
- 破損・脱落時に自分だけでなく周囲を危険にする
- 前方視界やミラーを遮る可能性
- ワイパーや電装を自分で設計する必要
- 鋭い端部や突起を作ると危険
- 車体フレームや樹脂部品に想定外の力が掛かる
- 事故時に改造内容と保険の扱いを確認する必要がある
屋根は停止中のテントとは違い、走行すると常に風圧を受けます。時速が上がるほど荷重は急激に増え、さらに横風や大型車の風圧も加わります。「アルミパイプを組んでポリカ板を付ければ完成」とは考えない方がいいです。
法律・登録は大丈夫?
後付け屋根そのものが一律に禁止されているわけではありません。ただし、公道を走る車両である以上、視界、灯火類、ミラー、突起、固定状態などが安全な状態である必要があります。
国土交通省は、車検対象車について長さ・幅・高さなどが変わる改造では、変更量や部品・取付方法によって構造等変更検査が必要になる場合があると案内しています。125ccや250cc以下は車検制度上の手続きが同じではありませんが、「車検がない=どんな屋根でも自由」という意味ではありません。
自作品や汎用品を付ける場合は、販売店・整備店に加えて、必要に応じて自治体や運輸支局、加入している保険会社にも確認しておくと安心です。
配達員なら屋根にいくらまで出す価値がある?
ここは使用頻度で大きく変わります。
- 週1〜2回・晴天中心:28万円の専用ルーフは割高になりやすい
- 毎日の通勤:雨・冬・夏の日差しを考えると価値が出やすい
- フードデリバリー専業・長時間:身体の負担軽減と雨天稼働を考えれば検討価値が高い
特に配達では、屋根そのものが売上を生むわけではありませんが、雨の日に稼働できる日数が増える、着替えの回数が減る、冬の疲労が減るという形でメリットが出ます。
結論:本気で使うなら自作より専用ルーフ
後付け屋根は見た目が大きく変わり、価格も安くありません。それでも、毎日バイクに乗る人にとっては雨・冬の風・夏の日差しをまとめて減らせる数少ない装備です。
NMAX25〜26年型なら、現時点ではTEITO SLR for NMAXを第一候補にします。車種専用で、ワイズギア取扱、電動ワイパー、補修部品の相談先まで揃っているためです。
PCXなら、これから車体ごと買う人はオートサービス翔の帝都産業製ルーフ仕様が候補。すでにPCXを持っている場合は施工店探しが必要です。旧型PCXやトリシティならZORROも候補ですが、対応型式と納期を必ず確認したいところです。
完全自作は「安くできる」魅力より、走行中に壊れないことの方が重要です。毎日使う配達車なら、数万円を節約するために固定強度や視界のリスクを背負うより、実績のあるルーフを専門店で取り付けてもらう方をおすすめします。
